フェンシングコラム

フェンシングのアタック権(攻撃権)とは

フェンシングのアタック権(攻撃権)とは 昨今のコロナ騒動がおさまらず、オリンピックも延期となってしまい、フェンシング界にとって厳しい時期が続いています。4月から新しく新入生を迎え、新入部員を獲得して新体制が始まるはずの各学校フェンシング部も、予定と違う状況を余儀なくされています。さて、そんな中ですが、フェンシングを新しく始めたい人向けに、今回は「アタック権(攻撃権)」というものをご紹介します。 アタック権とはつまり、優先権 はじめに言ってしまいますが、このアタック権というルールは、川崎フェンシングクラブでメインとしてやっているエペには存在しません。あくまでもフルーレとサーブルだけに適用されるものです。ただ、まだまだ「初心者はフルーレから始める」という日本フェンシングの基本は変わりませんので、新しくフェンシングを始める人がまず最初に当たる壁だと思います。フェンシングでは「電気審判機」というものを使いますので、相手の有効面を突けば色ランプがつきます(無効面は白ランプ)。では色ランプがつけば必ず得点になるかと言えば実はそうではなく、エペ以外のフルーレとサーブルでは、色ランプがついても自分の得点にならないことがあるのです。それを左右するのが、アタック権です。このアタック権というものは言ってみれば優先権ですので、両者が同時に突いてランプが両方ついた時にしか意味はありません。片方だけにランプがついた場合は、どういうアタック権であったとしてもそのランプ通りになるので、白ランプであれば無効面で得点無し、色ランプであれば得点になります。つまり同時に両者が突いて同時に両方のランプがついた場合、どちらかにアタック権があれば、そちらが優先されるのです。どちらかにアタック権がある場合は、両方のランプがついても、アタック権のある側のランプしか意味を持ちません。アタック権のある側が色ランプがついた場合、そちらの得点になります。アタック権のある側が白ランプの場合、無効面なので得点は入らず、その場から再開になります。どちらの場合でも、アタック権のない側のランプが白だろうが色だろうが、一切関係はありません。アタック権を手に入れるにはどうするかアタック権を自分が手に入れるためには、原則として2つの方法があります。まず基本になるアタック権を手に入れる方法は「相手より先に攻撃をする」ということです。これがアタック権を手に入れる為の、基本中の基本、全ての始まりになります。この「相手より先に攻撃をする」というのは実は簡単な基準ではなく、「何をもって攻撃になるのか」という難しさがあります。しかしこのコラムを読む中心になるであろう初心者のフルーレの人のために分かりやすく言えば、まず前にでることそのものが攻撃のスタートになります。ですから例えば、プレアレで試合が始まった後、片方が前に出て、もう片方はそのままその場に止まっていて、そして両者同時に突いて両方色ランプがついたとします。この場合、前に出たほうがアタック権を持っていて得点になり、止まっていて相手が来たのでただ剣を出した側は、得点にならないのです。もうちょっと難しいパターンを見てみましょう。プレアレで始まった後、両者同時に前に出たとします。右の選手が少し早く突き出して、左の選手が遅れて突き出したとします。この場合も、前に出るまでは両者同時だったのですが、剣を突き出す動作が早かった右の選手が、その瞬間からアタック権を得たのです。遅れた側にはそれがありません。ですのでこれは、右の選手の得点になります。さらにややこしいパターンを見てみましょう。プレアレで両者同時に前に出て、右の選手のほうが早く剣を突き出しましたが、左の選手のほうが腕を伸ばすのが圧倒的に速く、遅れて伸ばし始めたのに先に突いた場合は、どうなるでしょうか?この場合、上の例と同じく、右の選手のアタック権、右の選手の得点になります。アタック権が生まれるのは突いた瞬間ではなく、突くために剣を出しはじめたタイミングです。そのタイミングが早いほうがアタック権を持っているため、遅れて出し始めた側がどれほど速く先に突こうとも、先に伸ばし始めた側が権利を持っています。これは裏を返せば「一度アタック権を取ってしまえば、後はゆっくりでいい」という事にもなります。ここが、一段上のレベルに行くかどうかの分かれ目にもなってくるでしょう。よりややこしいパターンでは、「足が前に出るのは少し遅れたけど剣を突きに行くタイミングは早かった場合はどうか」とかその逆のパターンもあり、シュルラプレパラーションというとても難しい判定があるのですが、初心者には難しい為ここでは説明しません。初心者の場合まず徹底すべきは「相手より先に攻撃する」ということと、「相手が先に攻撃してきたら、遅れて合わせない」ということになります。アタック権を奪い取るには相手が先に動き出してアタック権を取った場合、これに対してもうどうにもできないかと言うと・・・実はそうではありません。アタック権は相手から奪い取る事ができます。このアタック権を奪い取る最も基本の形が、相手の剣を叩くことです。相手がどんなに先に攻撃をしかけてきたとしても、相手の剣を自分の剣で叩いてから攻撃すれば、叩いた側がアタック権を持ちます。たとえばプレアレで右の選手が前に出て先に攻撃をし、左の選手はその場に立っていたとします。右の選手が剣も先に伸ばしはじめて攻撃しますが、左の選手はその場で右の選手の剣に自分の剣を当ててから遅れて突いて、両者色ランプがついたとします。この場合、左の選手のアタック権、得点となるのです。これはフェンシングを始めたての子供が「とにかく先に行けばいいんだ!!」とただ突っ込む事を覚えた時期にはまりやすいポイントです。とにかく先に行けばいい!と自信満々に剣を伸ばしてくるので、待ってる側はその剣に当ててから突けばいいだけなのです。「叩かれると権利を取られる」という事を知らないと「?????」となるばかりなので、同じパターンを繰り返して負けてしまうこともしばしばです。こういう時、剣を当ててる側は「はい、いらっしゃーい」と内心叫んでいたりします。いやらしいですね。つまり、攻める側にとっては、先に攻撃を仕掛けたとしても途中で剣を当てられてしまえば意味が無いのです。そのため、これを避ける為のディガジェやクーペなど、相手の剣をよけていく技術が色々とあります。また、攻めているつまり既にアタック権を持っている側が剣を叩いた場合、そのまま自分が継続して権利を持ちます。そのため、むしろ自分のほうが相手の剣に当てていく攻撃もあります(アタックオフェール)。フェンシングを始めて、アタック権を最初に理解した子が陥るのが「突っ込み厨」とにかく突っ込むことです(本来よいことですが)。次に権利を奪うことを覚えた子が陥りがちなのが「叩き厨」で、とにかく執拗に相手の剣を叩き続けます。でも、忘れないでください。アタック権は、あくまでも両者が同時に突いて両方のランプがついている時だけに適用されるルールなのです。権利欲しさに執拗に相手の剣を叩いている間に相手に真っすぐに突かれてしまい、相手を突けずにランプがつかない・・・という状況をよく見ます。「権利を持っているから遅くてもいいやー」とゆっくり突きすぎて、ランプがつかないなどもよくあります。あくまでも相手と同時に突いたからこその、アタック権なのです。同時だった場合はどうなるの?プレアレと同時に両者が同時に前に出て、同時に突いた場合。これは優先権は存在しないため、フルーレの場合はどちらにも点が入りません。エペだけは両者に点が入る事がありますが、フルーレとサーブルではふつう両者に点が入ることはありません。これは相手の剣を叩いた時も同様で、両者が同時に相手の剣を叩いた場合、どちらも優先されません。ただし例えば、右の選手が前に出て、左の選手はその場に止まっていて、最後に剣を両者同時に叩いて同時に突いたとします。この場合は、前に出た右の選手の得点になります。右の選手は、前に出た時点で既にアタック権を持っているのです。その後両者同時に叩きますが、同時に叩くということは剣を叩いた事でアタック権の移動が発生しないため、前に出た分のアタック権をそのまま持っているのです。ちなみに剣を叩くアタック権の取り方は、先に攻撃をするのと違い、「最後に叩いたほうに権利がある」ということになります。したがって、右の選手が50回剣を叩いた後に突こうとしたとしても、左の選手がその後の最後に1回だけ剣を叩けば、左の選手のアタック権になります。そのため初心者が審判をやるときに難しくなるのが、「どちらが叩いたか」という点と、「どの叩いたのが最後だったのか」という点の見極めになります。アタック権を失う時アタック権は一度手に入れれば剣を叩かれない限りずっと持っているかといえば、そうではありません。アタック権とはつまり「攻撃をする権利」ですので、「攻撃をしないと失う」のです。これは「攻撃を終了した」とみなされても失います。例えば、プレアレと同時に右の選手が猛然と前に出て、左の選手は止まったままだったとします。この時点ではアタック権は右の選手です。しかし突きに行く直前、あと一歩ほどの距離で右の選手が立ち止まり、そこで左の選手が一歩前に出て、同時に突いたとします。この場合は、左の選手のアタック権、得点になります。右の選手は最初に猛然と前に行った瞬間はアタック権を持っていたのですが、立ち止まったところで「攻撃が終了した」とみなされ、そして左の選手が一歩前に出たところで左の選手がアタック権を得ているのです。では両者立ち止まっているとどうなるか。プレアレと同時に右の選手は前に出て攻撃が届く距離に行ったものの、攻撃せずに立ち止まります。左の選手もそこで前には出ず、しばらく立ち止まったまま・・・の後に両者突きます。そうするとこれは両者立ち止まっている間は権利を持っていないので、最後に突きにいった時にアタック権が発生しますので、同時であれば引き分けで点は入りません。そしてアタック権は「攻撃を終了」しても失います。プレアレと同時に右の選手が猛然と突っ込んで行きます。もちろん右の選手のアタック権です。そしてさぁ攻撃!突きに行くのも右の選手、左の選手は微動だにしません!ところが!そこで右の選手がまさかのパッセ、攻撃を思いっきり外してしまってなんのランプもつきません。慌てて突きなおす右の選手と同時に、左の選手も突いて、両者色ランプがついたとします。どちらの点でしょうか?答えは、左の選手の得点です。相手がただ外しちゃったのでその後に突いただけでも、得点になってしまうのです。やられた側は、最も虚しい瞬間です。アタック権のあるフルーレやサーブルの場合、「攻撃は順番にやる」という原則があります。そのため、一度攻撃を終了すると、今度は相手の攻撃のターンになりますので、自動的に相手がアタック権を持ってしまうのです。右の選手が一度攻撃を外してしまうと左の選手がアタック権を持っているため、慌てて右の選手がもう一度突き始めるのがちょっとくらい早かったとしても、左の選手の突きがランプがつく程度に間に合えば、左の選手の得点になります。この自動的に持ったアタック権がいつまでもつか、というのは実はとても難しい判断で、アタック権というのは「攻撃をしないと失う」ため、右の選手が外した後にしばらく時間が経ってから両者突くと、どちらも権利が無いとみなされます。ここは初心者にはとても難しく、究極的には審判次第でもありますが、基本的には「攻撃は順番、一度外せば次は相手が権利を持つ」と覚えましょう。ちなみに相手の攻撃を返すことを「リポスト」と言いますが、相手の攻撃を受け止めて返すのが「パラードリポスト」、避けて(勝手に外れるのも含む)返すのを「ノンリポスト」といい、どちらもリポストになります。素早くアタック権を理解して、フェンシング部の同期に差をつけよう!フルーレやサーブルをやる選手にとって、アタック権をどのくらい素早く理解できるかは、成績に大きく結びつきます。アタック権が今どうなっているのか常に意識し、分からないときは審判に確認して、なぜアタック権がそこにあるのか、を理解しましょう。将来サーブルをやってみたい場合などはここが顕著で、とてつもなくシビアなアタック権の感覚が必要ですので、早めから意識しておくことをお勧めします(1回剣を振るだけでアタックノンつまり攻撃終了したと言われたりします)そしてもう1つ忘れてはならないことを。フェンシングは、最後は相手を突かねば意味がありません。華麗なパラードで相手の攻撃を受け止め、巧みすぎるプリーズオフェール(前で剣を当てること)で権利を奪い、優雅に権利を保ったまま前に出たとしても。最後に突くときに無効面の白ランプさえもつかなければ、権利を全く持ってない相手にやられてしまうのです。攻撃が終了するとアタック権は失いますが、そこであえて突きに行く「ルミーズ」という技があります。権利を持ったからといって油断しきっている相手には「権利なくてもいいから突いてしまって後は逃げれば良い」という考え方もあるのです。「どうやってリポストしてやろうかなー」と考えてる間に突かれて「順番守れよ!!!」と涙目で叫ぶ人を見た事がありますが、ランプがつかなければそれまでです。アタック権はとても大事なのですが、相手の剣を必ず避けて相手のランプをつけさせないスキルがある人には、実は全くいらないものだったりもします。初心者から脱却する為にアタック権を知る必要はありますが、その先には「あえてアタック権を無視する」という世界もあるのです。そこに向かっていくためにも、まずはアタック権がどういうものであるか、きちんと理解していきましょう。(ライター:MUSYA)

フェンシングのアタック権(攻撃権)とは

フェンシングのアタック権(攻撃権)とは 昨今のコロナ騒動がおさまらず、オリンピックも延期となってしまい、フェンシング界にとって厳しい時期が続いています。4月から新しく新入生を迎え、新入部員を獲得して新体制が始まるはずの各学校フェンシング部も、予定と違う状況を余儀なくされています。さて、そんな中ですが、フェンシングを新しく始めたい人向けに、今回は「アタック権(攻撃権)」というものをご紹介します。 アタック権とはつまり、優先権 はじめに言ってしまいますが、このアタック権というルールは、川崎フェンシングクラブでメインとしてやっているエペには存在しません。あくまでもフルーレとサーブルだけに適用されるものです。ただ、まだまだ「初心者はフルーレから始める」という日本フェンシングの基本は変わりませんので、新しくフェンシングを始める人がまず最初に当たる壁だと思います。フェンシングでは「電気審判機」というものを使いますので、相手の有効面を突けば色ランプがつきます(無効面は白ランプ)。では色ランプがつけば必ず得点になるかと言えば実はそうではなく、エペ以外のフルーレとサーブルでは、色ランプがついても自分の得点にならないことがあるのです。それを左右するのが、アタック権です。このアタック権というものは言ってみれば優先権ですので、両者が同時に突いてランプが両方ついた時にしか意味はありません。片方だけにランプがついた場合は、どういうアタック権であったとしてもそのランプ通りになるので、白ランプであれば無効面で得点無し、色ランプであれば得点になります。つまり同時に両者が突いて同時に両方のランプがついた場合、どちらかにアタック権があれば、そちらが優先されるのです。どちらかにアタック権がある場合は、両方のランプがついても、アタック権のある側のランプしか意味を持ちません。アタック権のある側が色ランプがついた場合、そちらの得点になります。アタック権のある側が白ランプの場合、無効面なので得点は入らず、その場から再開になります。どちらの場合でも、アタック権のない側のランプが白だろうが色だろうが、一切関係はありません。アタック権を手に入れるにはどうするかアタック権を自分が手に入れるためには、原則として2つの方法があります。まず基本になるアタック権を手に入れる方法は「相手より先に攻撃をする」ということです。これがアタック権を手に入れる為の、基本中の基本、全ての始まりになります。この「相手より先に攻撃をする」というのは実は簡単な基準ではなく、「何をもって攻撃になるのか」という難しさがあります。しかしこのコラムを読む中心になるであろう初心者のフルーレの人のために分かりやすく言えば、まず前にでることそのものが攻撃のスタートになります。ですから例えば、プレアレで試合が始まった後、片方が前に出て、もう片方はそのままその場に止まっていて、そして両者同時に突いて両方色ランプがついたとします。この場合、前に出たほうがアタック権を持っていて得点になり、止まっていて相手が来たのでただ剣を出した側は、得点にならないのです。もうちょっと難しいパターンを見てみましょう。プレアレで始まった後、両者同時に前に出たとします。右の選手が少し早く突き出して、左の選手が遅れて突き出したとします。この場合も、前に出るまでは両者同時だったのですが、剣を突き出す動作が早かった右の選手が、その瞬間からアタック権を得たのです。遅れた側にはそれがありません。ですのでこれは、右の選手の得点になります。さらにややこしいパターンを見てみましょう。プレアレで両者同時に前に出て、右の選手のほうが早く剣を突き出しましたが、左の選手のほうが腕を伸ばすのが圧倒的に速く、遅れて伸ばし始めたのに先に突いた場合は、どうなるでしょうか?この場合、上の例と同じく、右の選手のアタック権、右の選手の得点になります。アタック権が生まれるのは突いた瞬間ではなく、突くために剣を出しはじめたタイミングです。そのタイミングが早いほうがアタック権を持っているため、遅れて出し始めた側がどれほど速く先に突こうとも、先に伸ばし始めた側が権利を持っています。これは裏を返せば「一度アタック権を取ってしまえば、後はゆっくりでいい」という事にもなります。ここが、一段上のレベルに行くかどうかの分かれ目にもなってくるでしょう。よりややこしいパターンでは、「足が前に出るのは少し遅れたけど剣を突きに行くタイミングは早かった場合はどうか」とかその逆のパターンもあり、シュルラプレパラーションというとても難しい判定があるのですが、初心者には難しい為ここでは説明しません。初心者の場合まず徹底すべきは「相手より先に攻撃する」ということと、「相手が先に攻撃してきたら、遅れて合わせない」ということになります。アタック権を奪い取るには相手が先に動き出してアタック権を取った場合、これに対してもうどうにもできないかと言うと・・・実はそうではありません。アタック権は相手から奪い取る事ができます。このアタック権を奪い取る最も基本の形が、相手の剣を叩くことです。相手がどんなに先に攻撃をしかけてきたとしても、相手の剣を自分の剣で叩いてから攻撃すれば、叩いた側がアタック権を持ちます。たとえばプレアレで右の選手が前に出て先に攻撃をし、左の選手はその場に立っていたとします。右の選手が剣も先に伸ばしはじめて攻撃しますが、左の選手はその場で右の選手の剣に自分の剣を当ててから遅れて突いて、両者色ランプがついたとします。この場合、左の選手のアタック権、得点となるのです。これはフェンシングを始めたての子供が「とにかく先に行けばいいんだ!!」とただ突っ込む事を覚えた時期にはまりやすいポイントです。とにかく先に行けばいい!と自信満々に剣を伸ばしてくるので、待ってる側はその剣に当ててから突けばいいだけなのです。「叩かれると権利を取られる」という事を知らないと「?????」となるばかりなので、同じパターンを繰り返して負けてしまうこともしばしばです。こういう時、剣を当ててる側は「はい、いらっしゃーい」と内心叫んでいたりします。いやらしいですね。つまり、攻める側にとっては、先に攻撃を仕掛けたとしても途中で剣を当てられてしまえば意味が無いのです。そのため、これを避ける為のディガジェやクーペなど、相手の剣をよけていく技術が色々とあります。また、攻めているつまり既にアタック権を持っている側が剣を叩いた場合、そのまま自分が継続して権利を持ちます。そのため、むしろ自分のほうが相手の剣に当てていく攻撃もあります(アタックオフェール)。フェンシングを始めて、アタック権を最初に理解した子が陥るのが「突っ込み厨」とにかく突っ込むことです(本来よいことですが)。次に権利を奪うことを覚えた子が陥りがちなのが「叩き厨」で、とにかく執拗に相手の剣を叩き続けます。でも、忘れないでください。アタック権は、あくまでも両者が同時に突いて両方のランプがついている時だけに適用されるルールなのです。権利欲しさに執拗に相手の剣を叩いている間に相手に真っすぐに突かれてしまい、相手を突けずにランプがつかない・・・という状況をよく見ます。「権利を持っているから遅くてもいいやー」とゆっくり突きすぎて、ランプがつかないなどもよくあります。あくまでも相手と同時に突いたからこその、アタック権なのです。同時だった場合はどうなるの?プレアレと同時に両者が同時に前に出て、同時に突いた場合。これは優先権は存在しないため、フルーレの場合はどちらにも点が入りません。エペだけは両者に点が入る事がありますが、フルーレとサーブルではふつう両者に点が入ることはありません。これは相手の剣を叩いた時も同様で、両者が同時に相手の剣を叩いた場合、どちらも優先されません。ただし例えば、右の選手が前に出て、左の選手はその場に止まっていて、最後に剣を両者同時に叩いて同時に突いたとします。この場合は、前に出た右の選手の得点になります。右の選手は、前に出た時点で既にアタック権を持っているのです。その後両者同時に叩きますが、同時に叩くということは剣を叩いた事でアタック権の移動が発生しないため、前に出た分のアタック権をそのまま持っているのです。ちなみに剣を叩くアタック権の取り方は、先に攻撃をするのと違い、「最後に叩いたほうに権利がある」ということになります。したがって、右の選手が50回剣を叩いた後に突こうとしたとしても、左の選手がその後の最後に1回だけ剣を叩けば、左の選手のアタック権になります。そのため初心者が審判をやるときに難しくなるのが、「どちらが叩いたか」という点と、「どの叩いたのが最後だったのか」という点の見極めになります。アタック権を失う時アタック権は一度手に入れれば剣を叩かれない限りずっと持っているかといえば、そうではありません。アタック権とはつまり「攻撃をする権利」ですので、「攻撃をしないと失う」のです。これは「攻撃を終了した」とみなされても失います。例えば、プレアレと同時に右の選手が猛然と前に出て、左の選手は止まったままだったとします。この時点ではアタック権は右の選手です。しかし突きに行く直前、あと一歩ほどの距離で右の選手が立ち止まり、そこで左の選手が一歩前に出て、同時に突いたとします。この場合は、左の選手のアタック権、得点になります。右の選手は最初に猛然と前に行った瞬間はアタック権を持っていたのですが、立ち止まったところで「攻撃が終了した」とみなされ、そして左の選手が一歩前に出たところで左の選手がアタック権を得ているのです。では両者立ち止まっているとどうなるか。プレアレと同時に右の選手は前に出て攻撃が届く距離に行ったものの、攻撃せずに立ち止まります。左の選手もそこで前には出ず、しばらく立ち止まったまま・・・の後に両者突きます。そうするとこれは両者立ち止まっている間は権利を持っていないので、最後に突きにいった時にアタック権が発生しますので、同時であれば引き分けで点は入りません。そしてアタック権は「攻撃を終了」しても失います。プレアレと同時に右の選手が猛然と突っ込んで行きます。もちろん右の選手のアタック権です。そしてさぁ攻撃!突きに行くのも右の選手、左の選手は微動だにしません!ところが!そこで右の選手がまさかのパッセ、攻撃を思いっきり外してしまってなんのランプもつきません。慌てて突きなおす右の選手と同時に、左の選手も突いて、両者色ランプがついたとします。どちらの点でしょうか?答えは、左の選手の得点です。相手がただ外しちゃったのでその後に突いただけでも、得点になってしまうのです。やられた側は、最も虚しい瞬間です。アタック権のあるフルーレやサーブルの場合、「攻撃は順番にやる」という原則があります。そのため、一度攻撃を終了すると、今度は相手の攻撃のターンになりますので、自動的に相手がアタック権を持ってしまうのです。右の選手が一度攻撃を外してしまうと左の選手がアタック権を持っているため、慌てて右の選手がもう一度突き始めるのがちょっとくらい早かったとしても、左の選手の突きがランプがつく程度に間に合えば、左の選手の得点になります。この自動的に持ったアタック権がいつまでもつか、というのは実はとても難しい判断で、アタック権というのは「攻撃をしないと失う」ため、右の選手が外した後にしばらく時間が経ってから両者突くと、どちらも権利が無いとみなされます。ここは初心者にはとても難しく、究極的には審判次第でもありますが、基本的には「攻撃は順番、一度外せば次は相手が権利を持つ」と覚えましょう。ちなみに相手の攻撃を返すことを「リポスト」と言いますが、相手の攻撃を受け止めて返すのが「パラードリポスト」、避けて(勝手に外れるのも含む)返すのを「ノンリポスト」といい、どちらもリポストになります。素早くアタック権を理解して、フェンシング部の同期に差をつけよう!フルーレやサーブルをやる選手にとって、アタック権をどのくらい素早く理解できるかは、成績に大きく結びつきます。アタック権が今どうなっているのか常に意識し、分からないときは審判に確認して、なぜアタック権がそこにあるのか、を理解しましょう。将来サーブルをやってみたい場合などはここが顕著で、とてつもなくシビアなアタック権の感覚が必要ですので、早めから意識しておくことをお勧めします(1回剣を振るだけでアタックノンつまり攻撃終了したと言われたりします)そしてもう1つ忘れてはならないことを。フェンシングは、最後は相手を突かねば意味がありません。華麗なパラードで相手の攻撃を受け止め、巧みすぎるプリーズオフェール(前で剣を当てること)で権利を奪い、優雅に権利を保ったまま前に出たとしても。最後に突くときに無効面の白ランプさえもつかなければ、権利を全く持ってない相手にやられてしまうのです。攻撃が終了するとアタック権は失いますが、そこであえて突きに行く「ルミーズ」という技があります。権利を持ったからといって油断しきっている相手には「権利なくてもいいから突いてしまって後は逃げれば良い」という考え方もあるのです。「どうやってリポストしてやろうかなー」と考えてる間に突かれて「順番守れよ!!!」と涙目で叫ぶ人を見た事がありますが、ランプがつかなければそれまでです。アタック権はとても大事なのですが、相手の剣を必ず避けて相手のランプをつけさせないスキルがある人には、実は全くいらないものだったりもします。初心者から脱却する為にアタック権を知る必要はありますが、その先には「あえてアタック権を無視する」という世界もあるのです。そこに向かっていくためにも、まずはアタック権がどういうものであるか、きちんと理解していきましょう。(ライター:MUSYA)

未経験者向け!フェンシングとは

未経験者向け!フェンシングとは オリンピックが東京で開催されるにあたり、注目がますます高まるフェンシング。今回ここでは、フェンシングってなんか聞いたことあるけどなんだっけ?という人に向けて、フェンシングをご紹介します。経験者向けではありませんので、経験者の方はハイ!後ろ向いて。プレ・・・アレアレいってこーーい。 フェンシングですよ、フェンシング まず単語からして、横文字なので敷居が高いのです。一番よくあるのは・・・フェイシング!フェイシングとは- 商品の包装の上面、顔に当る部分をフェイスといい、面を揃えることから、商品陳列をいう。陳列棚(ゴンドラ)内において、面(フェイス)をいかにきちんと、また、購買意欲をそそるように陳列するかが、フェイシングの技法といえる。これに派生して陳列管理をフェイシング管理という。(出典 (株)ジェリコ・コンサルティング / 流通用語辞典について / コトバンク)・・・商品の陳列方法ですよ?オリンピックで?世界の頂点を競うわけですか?いかに購買意欲をそそるかを?いやまぁそれはそれでちょっと見てみたいですけども・・・・。次によくあるのが、フィッシング。これはもう皆さんご存知ですよね、釣りです。「ねぇねぇ知ってる?オリンピックに釣りがあるんだよ?」とか言われると、なんか競技のバス釣り大会とかを思い浮かべて、へぇぇそうなんだ?とかなったりするかもしれませんが。そして実際ビジュアル的にも、「え、何持ってんの?釣り竿?」とはなりがちなので、あながち突拍子もない誤解ではありません、フィッシング。ただ・・・考えてください。体育館で、どうやってフィッシングやるのか。昔懐かしい魚釣りゲームですかね?とまぁこんな感じで「フェンシングやってます」「え?フェイシング?」「いえフェンシングです」「え?フィッシング?」と、話が全然進みません。耳の遠い高齢者と話しているかのようです。しかしなぜ高齢者は耳が遠いのに、自分の悪口だけはやけに繊細に聞こえるのでしょうか。都合よく耳が遠かったりボケたフリをする高齢者もいるので、油断もスキもありゃしません。 フェンシングのビジュアル さて、ようやく「フェンシング」という名前にたどり着いたとして。次に言われるのが、見た目のことです。「あれでしょ、全身タイツ」・・・そうやって言ってくる人は、ある意味見た事あるのかなって感じはします。「もじもじくんみたいなやつ」・・・そろそろもうネタが通用しません。月日が流れるのは無情の速さがあるものです。そのへんが無かったとしても、けっこう知ってそうな人のかなり多くの人が、「こういうのでしょ」と、利き手をシュッシュッと前へ何度も突き出しながら、左手をバカっぽく上げます。掌は上を向けない!!!自然に下へ!!!・・・コホン。それはともかく、フェンシングの、右利きの時のあの左手はなんなのか。確かに上げるように教わります。始めるときは。そして、右手に持った剣を前に思いっきり突く時、左手も大きく振り下ろします!バーン!!これによって剣に勢いが出るのだ!!と説明されるのですが、ちょっと待て。どう考えても後ろに振ってるでしょそれ。物理学無視してないか。右手を伸ばす時に、左手も同時に伸ばす事によって、自分の感覚がバーンと・・・なるかいな。両手同時に動かさなきゃいけない人にはスポーツ向いてないと思うんですがね。なので、まぁこうやって教わるわりに、試合でこういう攻撃をする人はめったにいません。というかちゃんと上げない。バランスを取るのに意味があるのは事実ですが、ずっと上げっぱにする事に意味は感じられない。それなりにやっている人のほとんどが、なんとなく体の脇あたりに浮いてます。たまーに、やけに綺麗に上げてる人もいますけどね。そういえばサーブルって、昔は必ず腰に当ててませんでしたか?逆手。そのかっこよさも、筆者がサーブルを好きになった理由でしたので、当時は必ず腰に当てていました。 フェンシングには種目が3つある?!   ここから先は、経験者しかまぁ知らない話です。 実はフェンシングは、その中で「フルーレ」「エペ」「サーブル」と3つも種目があるのです。最近少しずつ周知はされているものの、まだまだ知られていません。これら3つはどれも全てオリンピック種目であり、当たり前ですがそれぞれ別に開催され、トップレベルであれば選手はほぼ、それぞれの専門に分かれています。さぁではこれら3つの種目を、フェンシングをやらない/やる予定もない人でも分かるように解説しましょう! フルーレ   これは日本では最も盛んな、まるで「フェンシングの基本、フェンシングといえばフルーレを指す」というようなものです。フェンシングブームを巻き起こした現日本フェンシング協会会長の太田雄貴も、現国際オリンピック委員会会長のトーマス・バッハも、フルーレです。ここだけ見るとやっぱ基本っぽいなフルーレ。さぁそんなフルーレ、見分けるポイントは「銀色の部分の位置」と、鍔の大きさです。メタルジャケットと呼ばれる、通電用の鎖帷子の細かいやつみたいなものを、胴体の部分にだけつけているのが、フルーレです。よーくよーく見ると、実にダサい形です。あとメタルビブといい、マスクのアゴのあたりにたれがついてますがそこの一部が銀色になっているかどうかもポイントです。なっていればフルーレ。剣の鍔、フェンシングでいうところのガードが小さくて平べったいのも、遠目にフルーレを見分けるポイントです。ルールとしては、なんだかちょこまかとややこしく、ランプついた!!!え?無効面?色のランプがつかないとだめなの?とか、色のランプついた!!!え?攻撃権?自分色のランプついてるんスけどダメなんスか?とか、よっしゃとにかく先に突いた!自分だけ色ランプついた!どや!え?ヘッドダウン?どーしても自分の点にならんのか審判てめぇこのやr*h=ls+g$yn%kh#nkとまぁこのように、なかなか紛糾しがちな種目です。フルーレで勝つためのコツは、審判に先に付け届け(ワイロ)を欠かさないことでしょう。「中東の笛」が来ればいける。きっと。 エペ   エペの見た目の最大のポイントは、真っ白さ。銀の部分が無い、メタルジャケットという通電部が無いのが特徴です。マスクのたれのところも真っ白。 ただし最近では「カラーメタル」といって、カラーリングのメタルジャケットを着ている事も多く、白メタルだと、銀色の部分が白いので遠目にはフルーレとエペが一瞬分かりません。近づけば、メタルだとなんか表面がガザガザしていますが。剣の鍔であるガードも、フルーレよりはだいぶごっつく大きいものがついています。真横から剣を見た時に、鍔がほぼまっ平なのがフルーレ、もこっとドーム型なのがエペで、未経験者にはここの違いが一番分かりやすいかもしれません。ルールはとにかく単純明快で、早い者勝ち、ランプがつけば得点。実に明朗会計です。たまにぼったくられるフルーレとは違う。まぁそれだけに、ちょっとバカっぽさもありますが、実は単純なようでいて、ルールが単純なだけに実はとても高度で繊細な駆け引きをしていたりします。ちなみに当川崎フェンシングクラブでやるのも、このエペです。代表コーチである武田仁そのままですから、皆さん覚えてください。ちょっとバカっぽく単純なようでいて、実はとても高度で繊細だったりする武田仁、です。 サーブル   最後が、オマケのような扱いになりがちのサーブルです。ローカルな大会だと、「参加者8名」とかだったりもします。いきなりのベスト8。入賞したぜ!って自慢できます。ドンゲツでも。(逆に優勝してもなぜかちょっと寂しかったりするので、皆さんもっとやりましょう、サーブル。川崎フェンシングクラブではやりませんが←)サーブルの見た目の特徴は、メタルジャケットの銀の部分が、上半身全てになっている事です。最も見分けやすいのは、マスクですね。メタルマスクといって、マスクの全てが銀色になっていて、サーブルはかっこよいのです。マスクが黒っぽいのはフルーレかエペで、黒い塗料を塗って絶縁しているわけです。サーブルは塗らないので銀色です(カラーメタルだと赤とか青とかいろいろありますが)。袖の部分のメタルもサーブル固有です。逆にサーブルは上半身だけなので、もし股間の部分がメタルならば、それはフルーレです。まったく股間も狙わせるとはフルーレは非紳士的な種目です。サーブルにはそんな事はありません。(※川崎フェンシングクラブは、股間どころか頭の先からつま先まで、どこでもOKなエペのみを開催いたします)剣の鍔・ガードは、サーブルの場合、上と下が繋がった、いかにも「サーベル」って感じの形状をしています。これがまた・・・かっこいいんだな。みなさん良いですか、かっこよさならサーブルの一択です。ここんとこ大事です。(※川崎フェンシングクラブはエペ専門です)サーブルのルールはというと、「斬ってよい」という、フェンシングにあるまじき方式です。叩っ斬ります。「痛くないの?」ってよく聞かれますが、ふっつーにミミズ腫れとかなってたりしますよ。この、剣をブンブン振り回してよいところも、かっこいいのです。やるならサーブルに限ります(※川崎フェンシングクラブは)ルールはというと・・・フルーレもかくや、というくらいの紛糾っぷり。同時の攻撃で同時にランプがついた!!これは引き分けか!!!え?前に出る時にほんのわずかに片方のつま先が上がるのが早かった?!左の選手の片方のつま先が上がるのが早かった!これは左の選手の得点か!!!え?右の選手のほうがほんのわずかに腕を伸ばし始めるのが早かった?腕もつま先も早かった!今度こそ得点か!!!え?わずかに途中で止まった?どーしても相手の点なのか審判てめぇこのやr*h=ls+g$yn%kh#nkとまぁこのように、荒れます。難癖をつけられているようにしか思えず、最後まで首を傾げたまま負けていったりします。サーブルで勝つためのコツは、審判をギラギラ睨み続けて必要以上に「ワホーー!」「トリャアアアアアアア!!!!」「ィヨッシャァァァァオオオエエエエエエ!!!!」とか雄叫びをあげて、恫喝する事でしょう。弱気な審判なら、いける。 フェンシングに触れてみよう   以上がフェンシングの3種目でした。途中なにかお見苦しいものも見えたかもしれませんが、フェンシングは騎士道精神にのっとった紳士のスポーツであり、とても美しいものです。是非、折があればフェンシングに触れてみてください。川崎フェンシングクラブでも、見学はどんな方でもご自由に可能です。勝つために必要なコツを本コラムでも少し書きましたが、本コラムで紹介していないエペのコツは、優秀なコーチが教えてくれます。騎士のスポーツとして。突け、(審判の弱い)心を。(ライター:MUSYA)

未経験者向け!フェンシングとは

未経験者向け!フェンシングとは オリンピックが東京で開催されるにあたり、注目がますます高まるフェンシング。今回ここでは、フェンシングってなんか聞いたことあるけどなんだっけ?という人に向けて、フェンシングをご紹介します。経験者向けではありませんので、経験者の方はハイ!後ろ向いて。プレ・・・アレアレいってこーーい。 フェンシングですよ、フェンシング まず単語からして、横文字なので敷居が高いのです。一番よくあるのは・・・フェイシング!フェイシングとは- 商品の包装の上面、顔に当る部分をフェイスといい、面を揃えることから、商品陳列をいう。陳列棚(ゴンドラ)内において、面(フェイス)をいかにきちんと、また、購買意欲をそそるように陳列するかが、フェイシングの技法といえる。これに派生して陳列管理をフェイシング管理という。(出典 (株)ジェリコ・コンサルティング / 流通用語辞典について / コトバンク)・・・商品の陳列方法ですよ?オリンピックで?世界の頂点を競うわけですか?いかに購買意欲をそそるかを?いやまぁそれはそれでちょっと見てみたいですけども・・・・。次によくあるのが、フィッシング。これはもう皆さんご存知ですよね、釣りです。「ねぇねぇ知ってる?オリンピックに釣りがあるんだよ?」とか言われると、なんか競技のバス釣り大会とかを思い浮かべて、へぇぇそうなんだ?とかなったりするかもしれませんが。そして実際ビジュアル的にも、「え、何持ってんの?釣り竿?」とはなりがちなので、あながち突拍子もない誤解ではありません、フィッシング。ただ・・・考えてください。体育館で、どうやってフィッシングやるのか。昔懐かしい魚釣りゲームですかね?とまぁこんな感じで「フェンシングやってます」「え?フェイシング?」「いえフェンシングです」「え?フィッシング?」と、話が全然進みません。耳の遠い高齢者と話しているかのようです。しかしなぜ高齢者は耳が遠いのに、自分の悪口だけはやけに繊細に聞こえるのでしょうか。都合よく耳が遠かったりボケたフリをする高齢者もいるので、油断もスキもありゃしません。 フェンシングのビジュアル さて、ようやく「フェンシング」という名前にたどり着いたとして。次に言われるのが、見た目のことです。「あれでしょ、全身タイツ」・・・そうやって言ってくる人は、ある意味見た事あるのかなって感じはします。「もじもじくんみたいなやつ」・・・そろそろもうネタが通用しません。月日が流れるのは無情の速さがあるものです。そのへんが無かったとしても、けっこう知ってそうな人のかなり多くの人が、「こういうのでしょ」と、利き手をシュッシュッと前へ何度も突き出しながら、左手をバカっぽく上げます。掌は上を向けない!!!自然に下へ!!!・・・コホン。それはともかく、フェンシングの、右利きの時のあの左手はなんなのか。確かに上げるように教わります。始めるときは。そして、右手に持った剣を前に思いっきり突く時、左手も大きく振り下ろします!バーン!!これによって剣に勢いが出るのだ!!と説明されるのですが、ちょっと待て。どう考えても後ろに振ってるでしょそれ。物理学無視してないか。右手を伸ばす時に、左手も同時に伸ばす事によって、自分の感覚がバーンと・・・なるかいな。両手同時に動かさなきゃいけない人にはスポーツ向いてないと思うんですがね。なので、まぁこうやって教わるわりに、試合でこういう攻撃をする人はめったにいません。というかちゃんと上げない。バランスを取るのに意味があるのは事実ですが、ずっと上げっぱにする事に意味は感じられない。それなりにやっている人のほとんどが、なんとなく体の脇あたりに浮いてます。たまーに、やけに綺麗に上げてる人もいますけどね。そういえばサーブルって、昔は必ず腰に当ててませんでしたか?逆手。そのかっこよさも、筆者がサーブルを好きになった理由でしたので、当時は必ず腰に当てていました。 フェンシングには種目が3つある?!   ここから先は、経験者しかまぁ知らない話です。 実はフェンシングは、その中で「フルーレ」「エペ」「サーブル」と3つも種目があるのです。最近少しずつ周知はされているものの、まだまだ知られていません。これら3つはどれも全てオリンピック種目であり、当たり前ですがそれぞれ別に開催され、トップレベルであれば選手はほぼ、それぞれの専門に分かれています。さぁではこれら3つの種目を、フェンシングをやらない/やる予定もない人でも分かるように解説しましょう! フルーレ   これは日本では最も盛んな、まるで「フェンシングの基本、フェンシングといえばフルーレを指す」というようなものです。フェンシングブームを巻き起こした現日本フェンシング協会会長の太田雄貴も、現国際オリンピック委員会会長のトーマス・バッハも、フルーレです。ここだけ見るとやっぱ基本っぽいなフルーレ。さぁそんなフルーレ、見分けるポイントは「銀色の部分の位置」と、鍔の大きさです。メタルジャケットと呼ばれる、通電用の鎖帷子の細かいやつみたいなものを、胴体の部分にだけつけているのが、フルーレです。よーくよーく見ると、実にダサい形です。あとメタルビブといい、マスクのアゴのあたりにたれがついてますがそこの一部が銀色になっているかどうかもポイントです。なっていればフルーレ。剣の鍔、フェンシングでいうところのガードが小さくて平べったいのも、遠目にフルーレを見分けるポイントです。ルールとしては、なんだかちょこまかとややこしく、ランプついた!!!え?無効面?色のランプがつかないとだめなの?とか、色のランプついた!!!え?攻撃権?自分色のランプついてるんスけどダメなんスか?とか、よっしゃとにかく先に突いた!自分だけ色ランプついた!どや!え?ヘッドダウン?どーしても自分の点にならんのか審判てめぇこのやr*h=ls+g$yn%kh#nkとまぁこのように、なかなか紛糾しがちな種目です。フルーレで勝つためのコツは、審判に先に付け届け(ワイロ)を欠かさないことでしょう。「中東の笛」が来ればいける。きっと。 エペ   エペの見た目の最大のポイントは、真っ白さ。銀の部分が無い、メタルジャケットという通電部が無いのが特徴です。マスクのたれのところも真っ白。 ただし最近では「カラーメタル」といって、カラーリングのメタルジャケットを着ている事も多く、白メタルだと、銀色の部分が白いので遠目にはフルーレとエペが一瞬分かりません。近づけば、メタルだとなんか表面がガザガザしていますが。剣の鍔であるガードも、フルーレよりはだいぶごっつく大きいものがついています。真横から剣を見た時に、鍔がほぼまっ平なのがフルーレ、もこっとドーム型なのがエペで、未経験者にはここの違いが一番分かりやすいかもしれません。ルールはとにかく単純明快で、早い者勝ち、ランプがつけば得点。実に明朗会計です。たまにぼったくられるフルーレとは違う。まぁそれだけに、ちょっとバカっぽさもありますが、実は単純なようでいて、ルールが単純なだけに実はとても高度で繊細な駆け引きをしていたりします。ちなみに当川崎フェンシングクラブでやるのも、このエペです。代表コーチである武田仁そのままですから、皆さん覚えてください。ちょっとバカっぽく単純なようでいて、実はとても高度で繊細だったりする武田仁、です。 サーブル   最後が、オマケのような扱いになりがちのサーブルです。ローカルな大会だと、「参加者8名」とかだったりもします。いきなりのベスト8。入賞したぜ!って自慢できます。ドンゲツでも。(逆に優勝してもなぜかちょっと寂しかったりするので、皆さんもっとやりましょう、サーブル。川崎フェンシングクラブではやりませんが←)サーブルの見た目の特徴は、メタルジャケットの銀の部分が、上半身全てになっている事です。最も見分けやすいのは、マスクですね。メタルマスクといって、マスクの全てが銀色になっていて、サーブルはかっこよいのです。マスクが黒っぽいのはフルーレかエペで、黒い塗料を塗って絶縁しているわけです。サーブルは塗らないので銀色です(カラーメタルだと赤とか青とかいろいろありますが)。袖の部分のメタルもサーブル固有です。逆にサーブルは上半身だけなので、もし股間の部分がメタルならば、それはフルーレです。まったく股間も狙わせるとはフルーレは非紳士的な種目です。サーブルにはそんな事はありません。(※川崎フェンシングクラブは、股間どころか頭の先からつま先まで、どこでもOKなエペのみを開催いたします)剣の鍔・ガードは、サーブルの場合、上と下が繋がった、いかにも「サーベル」って感じの形状をしています。これがまた・・・かっこいいんだな。みなさん良いですか、かっこよさならサーブルの一択です。ここんとこ大事です。(※川崎フェンシングクラブはエペ専門です)サーブルのルールはというと、「斬ってよい」という、フェンシングにあるまじき方式です。叩っ斬ります。「痛くないの?」ってよく聞かれますが、ふっつーにミミズ腫れとかなってたりしますよ。この、剣をブンブン振り回してよいところも、かっこいいのです。やるならサーブルに限ります(※川崎フェンシングクラブは)ルールはというと・・・フルーレもかくや、というくらいの紛糾っぷり。同時の攻撃で同時にランプがついた!!これは引き分けか!!!え?前に出る時にほんのわずかに片方のつま先が上がるのが早かった?!左の選手の片方のつま先が上がるのが早かった!これは左の選手の得点か!!!え?右の選手のほうがほんのわずかに腕を伸ばし始めるのが早かった?腕もつま先も早かった!今度こそ得点か!!!え?わずかに途中で止まった?どーしても相手の点なのか審判てめぇこのやr*h=ls+g$yn%kh#nkとまぁこのように、荒れます。難癖をつけられているようにしか思えず、最後まで首を傾げたまま負けていったりします。サーブルで勝つためのコツは、審判をギラギラ睨み続けて必要以上に「ワホーー!」「トリャアアアアアアア!!!!」「ィヨッシャァァァァオオオエエエエエエ!!!!」とか雄叫びをあげて、恫喝する事でしょう。弱気な審判なら、いける。 フェンシングに触れてみよう   以上がフェンシングの3種目でした。途中なにかお見苦しいものも見えたかもしれませんが、フェンシングは騎士道精神にのっとった紳士のスポーツであり、とても美しいものです。是非、折があればフェンシングに触れてみてください。川崎フェンシングクラブでも、見学はどんな方でもご自由に可能です。勝つために必要なコツを本コラムでも少し書きましたが、本コラムで紹介していないエペのコツは、優秀なコーチが教えてくれます。騎士のスポーツとして。突け、(審判の弱い)心を。(ライター:MUSYA)

エペこそがフェンシング

かつて日本ではフルーレこそが全てだった   フェンシングには、フルーレ、エペ、サーブルという3つの種目があります。このうちサーブルは、騎馬民族の戦いがルーツになっているといわれ、そのため有効面が今でも上半身だけになっています(下半身を狙うと馬を傷付けてしまうおそれがあるため)。サーブルはフェンシング3種目の中で唯一、斬ってもよい、というよりむしろ斬るのが主体となる種目ですから、他の2つの種目とはだいぶ一線を画しています。エペは貴族の決闘に用いられた言わば1対1の決闘手段として、騎士のたしなみとされたものであり、フェンシングの本流と言ってよいものです。対するフルーレはエペの練習用の種目ともいわれ、エペよりは軽い剣で剣の応酬を学ぶ、そのために「攻撃を受けられたら、今度は相手の攻撃を受ける」という順番を尊重する、そんな攻撃権が設定されています。しかし日本では、太田雄貴がオリンピックのフルーレでメダルを取るはるか前から、フルーレがフェンシングの中心でした。そのため、入門者は誰もがフルーレから始め、エペやサーブルをやりたくても「お前にはまだ早い」などと言われ、インターハイ団体戦もフルーレのみ、個人戦もフルーレは各県2人ずつでもエペサーブルは各県1人ずつ、その他の大会ではそもそもフルーレしか開催されない、という状況でした。そのためエペとサーブルはまとめて「種目」と呼ばれ、「フルーレで勝てないからエペやサーブルに逃げる」といったイメージが強く、「フルーレにあらずばフェンシングにあらず」という実に差別的な感覚が蔓延していました。しかし、サーブルは斬ってよいという特殊な動きが決してフルーレのそのまま延長線上には無く、また世界ではエペこそが主流のものでした。ですから、特に昔のフェンサーは3種目すべてやるのが当たり前でしたから「フルーレで強い人がなんだかんだ一番強い」という感覚も色濃くありますが、それは才能ある人がフルーレに行く比率が高かっただけの話であり、そういう強い人が「フルーレっぽいサーブル」や「フルーレっぽいエペ」をやっても勝ててしまった、というだけです。しかし現代になってだいぶ、変わってきました。特に日本フェンシング界で今もっとも熱いのは、エペと言えます。日本のトップ選手はついに世界のトップレベルで戦えるようになり、層の厚いエペの世界で、立派な成績を残しています。 エペの良いところ   さてそんなエペですが、フェンシングが今後スポーツとして自立したものになっていくために、とても重要なものだと思います。その理由はとてもシンプルで、「ルールが分かりやすい」ということです。フェンシングの他の2種目には、「アタック権」というとても厄介なものがあります。知らないとどちらの得点になるのか、ほとんど分かりません(フェンシング経験者でさえ分かってない事も少なくありません)。それに対してエペはそんなものは無いのです。とにかく突いたら得点。早い者勝ち。同時に突いたら?同時に両方に得点です。これは誰が見ていても分かります。また、サーブルの有効面は上半身だけ、フルーレの有効面は胴体だけですが、エペは全身どこでも有効です。これは動きのダイナミックさにも繋がります。頭でも爪先でも有効ですから、足を突きに行くとても低い姿勢から、飛び上がって背中に振り込むような動きまで、実に多彩でワイルドな動きになります。エペのルールを総括すればつまり「どこでもいいから先に突けば点」なのです。この圧倒的な分かりやすさは、2つの点で有利になります。1つは、初心者の始めやすさです。現在でも日本では、初心者が始めようとするとフルーレを紹介されることがほとんどです。しかしフルーレは剣が軽いのはいいですがルールはとても難しく、試しに試合をしてみても、まったく楽しくありません。フェンシングを初めて体験してみた人がフルーレをやり、自分が突いてランプがついているのに相手の得点になり、首を傾げて不機嫌になる、そんなシチュエーションも珍しいものではありません。しかしエペは違います。突いてランプがつけば自分の得点という明朗会計。まったく初めてやった人でも「いっちょやってやる」と目をキラキラさせながら攻め込んでくるものです。さすがにそれで経験者を相手に勝てるほど甘くもありませんが、それでも楽しめることはどんな趣味・娯楽にとっても、最も大事なスタートラインと言えるでしょう。そしてもう1つの有利な点は、「見ていて分かりやすい」というところです。他の2種目は、経験者以外は見ていてもまず分かりません。経験者であってもレベルがそれなりに無ければ、トップ選手のジャッジをするのは無理でしょう。しかしエペは違います。審判のすることと言えば、「交差したら止める」とか、あとはせいぜい絶縁された外側の床を突いたかどうか、接近戦のドサクサで相手の足に見せかけて自分の足を突いていないかどうかを見るくらいです。変な話、審判なんていなくても試合ができます。これは誰が見ていても、自分の応援する選手がどうなったか分かりやすく、見ていて楽しい、という点があります。ただしエペの観戦での欠点の1つは、なにせ早い者勝ちなので迂闊に飛び込んだりできず、お互いにかなりシビアに間合いをはかっていると、いつまでも似たような距離で動かない睨み合いのようになる事があることです。特に一部のレベルが低めの層だと「相手が来るのを待つ」と明確に決めていますから、そういう人同士の試合は見ていて面白いわけはありません。とはいえそんな事をする人はレベルが低い人だけであり、レベルが高くなれば待っているだけの人を調理する技も多彩になりますから待っていてもやられるだけ、見ていて楽しくなります。 今こそエペをフェンシングの中心に! やってよし見てよしのエペは、どうあってもフェンシングの中心になるべき種目なのです。この文章をここまで読んできたあなたは、きっと私がエペをこよなく愛し、エペを専門にやってきた人だと思うでしょう?ところが私はサーブルが専門で、一番愛するのもサーブルなのです!!サーブルの人がこれだけ推すのですから、エペの良さは本物です。笑他の2種目は、たくさん寂しい思いをしてきたのです。フルーレでは、ルールが分かりにくくて今一つ盛り上がりに欠け、挙げ句にすーぐピーピー鳴り出す貧弱な道具によるロスタイムの多さで、お客さんが続々と帰っていく。あ……待って…………と、それはそれは寂しい思いをしました。サーブルは動きはアクティブで3種目中最も迫力があるながら、本当にルールが分からない。フェンシング関係者が10割ほどを占めたかつての全日本選手権の会場でも、会場のあちこちから聞こえる「サーブル分かんね」の声。涙なくして語れません。しかしエペは違うのです。唯一、見合ったまま進まない展開は「ほい、はっけよい」と声をかけたくはなりますが、現在ではノーコンバッティビティという無気力試合の措置もあり、睨みあったまま数分が経過…というかつてのドラゴン*ールのアニメのような展開はもうありません。エペこそがやはり、騎士の本流であり、スポーツとしてのフェンシングでも本流となるよう、中心に来るべきものです。機会があればぜひ、エペを見てみたりやってみてください!!(注:大変恐縮ながら川崎フェンシングクラブでは道具・要員・場所の都合で、体験および入門希望者の受け入れは致しかねます。ご希望の場合は、近隣の他の練習場をご案内させていただきますので、ご了承ください。)(ライター:MUSYA)

エペこそがフェンシング

かつて日本ではフルーレこそが全てだった   フェンシングには、フルーレ、エペ、サーブルという3つの種目があります。このうちサーブルは、騎馬民族の戦いがルーツになっているといわれ、そのため有効面が今でも上半身だけになっています(下半身を狙うと馬を傷付けてしまうおそれがあるため)。サーブルはフェンシング3種目の中で唯一、斬ってもよい、というよりむしろ斬るのが主体となる種目ですから、他の2つの種目とはだいぶ一線を画しています。エペは貴族の決闘に用いられた言わば1対1の決闘手段として、騎士のたしなみとされたものであり、フェンシングの本流と言ってよいものです。対するフルーレはエペの練習用の種目ともいわれ、エペよりは軽い剣で剣の応酬を学ぶ、そのために「攻撃を受けられたら、今度は相手の攻撃を受ける」という順番を尊重する、そんな攻撃権が設定されています。しかし日本では、太田雄貴がオリンピックのフルーレでメダルを取るはるか前から、フルーレがフェンシングの中心でした。そのため、入門者は誰もがフルーレから始め、エペやサーブルをやりたくても「お前にはまだ早い」などと言われ、インターハイ団体戦もフルーレのみ、個人戦もフルーレは各県2人ずつでもエペサーブルは各県1人ずつ、その他の大会ではそもそもフルーレしか開催されない、という状況でした。そのためエペとサーブルはまとめて「種目」と呼ばれ、「フルーレで勝てないからエペやサーブルに逃げる」といったイメージが強く、「フルーレにあらずばフェンシングにあらず」という実に差別的な感覚が蔓延していました。しかし、サーブルは斬ってよいという特殊な動きが決してフルーレのそのまま延長線上には無く、また世界ではエペこそが主流のものでした。ですから、特に昔のフェンサーは3種目すべてやるのが当たり前でしたから「フルーレで強い人がなんだかんだ一番強い」という感覚も色濃くありますが、それは才能ある人がフルーレに行く比率が高かっただけの話であり、そういう強い人が「フルーレっぽいサーブル」や「フルーレっぽいエペ」をやっても勝ててしまった、というだけです。しかし現代になってだいぶ、変わってきました。特に日本フェンシング界で今もっとも熱いのは、エペと言えます。日本のトップ選手はついに世界のトップレベルで戦えるようになり、層の厚いエペの世界で、立派な成績を残しています。 エペの良いところ   さてそんなエペですが、フェンシングが今後スポーツとして自立したものになっていくために、とても重要なものだと思います。その理由はとてもシンプルで、「ルールが分かりやすい」ということです。フェンシングの他の2種目には、「アタック権」というとても厄介なものがあります。知らないとどちらの得点になるのか、ほとんど分かりません(フェンシング経験者でさえ分かってない事も少なくありません)。それに対してエペはそんなものは無いのです。とにかく突いたら得点。早い者勝ち。同時に突いたら?同時に両方に得点です。これは誰が見ていても分かります。また、サーブルの有効面は上半身だけ、フルーレの有効面は胴体だけですが、エペは全身どこでも有効です。これは動きのダイナミックさにも繋がります。頭でも爪先でも有効ですから、足を突きに行くとても低い姿勢から、飛び上がって背中に振り込むような動きまで、実に多彩でワイルドな動きになります。エペのルールを総括すればつまり「どこでもいいから先に突けば点」なのです。この圧倒的な分かりやすさは、2つの点で有利になります。1つは、初心者の始めやすさです。現在でも日本では、初心者が始めようとするとフルーレを紹介されることがほとんどです。しかしフルーレは剣が軽いのはいいですがルールはとても難しく、試しに試合をしてみても、まったく楽しくありません。フェンシングを初めて体験してみた人がフルーレをやり、自分が突いてランプがついているのに相手の得点になり、首を傾げて不機嫌になる、そんなシチュエーションも珍しいものではありません。しかしエペは違います。突いてランプがつけば自分の得点という明朗会計。まったく初めてやった人でも「いっちょやってやる」と目をキラキラさせながら攻め込んでくるものです。さすがにそれで経験者を相手に勝てるほど甘くもありませんが、それでも楽しめることはどんな趣味・娯楽にとっても、最も大事なスタートラインと言えるでしょう。そしてもう1つの有利な点は、「見ていて分かりやすい」というところです。他の2種目は、経験者以外は見ていてもまず分かりません。経験者であってもレベルがそれなりに無ければ、トップ選手のジャッジをするのは無理でしょう。しかしエペは違います。審判のすることと言えば、「交差したら止める」とか、あとはせいぜい絶縁された外側の床を突いたかどうか、接近戦のドサクサで相手の足に見せかけて自分の足を突いていないかどうかを見るくらいです。変な話、審判なんていなくても試合ができます。これは誰が見ていても、自分の応援する選手がどうなったか分かりやすく、見ていて楽しい、という点があります。ただしエペの観戦での欠点の1つは、なにせ早い者勝ちなので迂闊に飛び込んだりできず、お互いにかなりシビアに間合いをはかっていると、いつまでも似たような距離で動かない睨み合いのようになる事があることです。特に一部のレベルが低めの層だと「相手が来るのを待つ」と明確に決めていますから、そういう人同士の試合は見ていて面白いわけはありません。とはいえそんな事をする人はレベルが低い人だけであり、レベルが高くなれば待っているだけの人を調理する技も多彩になりますから待っていてもやられるだけ、見ていて楽しくなります。 今こそエペをフェンシングの中心に! やってよし見てよしのエペは、どうあってもフェンシングの中心になるべき種目なのです。この文章をここまで読んできたあなたは、きっと私がエペをこよなく愛し、エペを専門にやってきた人だと思うでしょう?ところが私はサーブルが専門で、一番愛するのもサーブルなのです!!サーブルの人がこれだけ推すのですから、エペの良さは本物です。笑他の2種目は、たくさん寂しい思いをしてきたのです。フルーレでは、ルールが分かりにくくて今一つ盛り上がりに欠け、挙げ句にすーぐピーピー鳴り出す貧弱な道具によるロスタイムの多さで、お客さんが続々と帰っていく。あ……待って…………と、それはそれは寂しい思いをしました。サーブルは動きはアクティブで3種目中最も迫力があるながら、本当にルールが分からない。フェンシング関係者が10割ほどを占めたかつての全日本選手権の会場でも、会場のあちこちから聞こえる「サーブル分かんね」の声。涙なくして語れません。しかしエペは違うのです。唯一、見合ったまま進まない展開は「ほい、はっけよい」と声をかけたくはなりますが、現在ではノーコンバッティビティという無気力試合の措置もあり、睨みあったまま数分が経過…というかつてのドラゴン*ールのアニメのような展開はもうありません。エペこそがやはり、騎士の本流であり、スポーツとしてのフェンシングでも本流となるよう、中心に来るべきものです。機会があればぜひ、エペを見てみたりやってみてください!!(注:大変恐縮ながら川崎フェンシングクラブでは道具・要員・場所の都合で、体験および入門希望者の受け入れは致しかねます。ご希望の場合は、近隣の他の練習場をご案内させていただきますので、ご了承ください。)(ライター:MUSYA)